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2007年01月21日

●第116話(スイス時計ティソについて)

ティソは以前は日本ではチソットと呼んでいました(ゼニスをゼニットと呼んだように)。30~40年程前には、オメガの姉妹品として(株)日本シイベルが日本輸入総代理店でした(ROLEXとチュードルの関係に少し似ているかもしれません)。

オメガが高価で買えなかった人が、スイス時計の入門品として購入して若人に人気がありました(当時の価格は2~3万円が中心でした。国産中級品のセイコー・シチズンが 7~8000円の時代)。ラドー・テクノス・ウォルサムのように、けっこう多くの人が愛用した時計であるに違い有りません。

家族経営から離れ、現在はスウォッチ・グループの一員として活動しております。以外に歴史は古く、1853年にチャールズ・フェリシアン・チソットとチャールズ・エミル・チソットの親子が、ジュラ渓谷の小さな村ルロックルに創業しました。アメリカ、ロシアに販路を開拓して、中堅のメーカーとして地位を確立しました。一時期には従業員の数が600人まで増え、一時代を謳歌しました。

技術の貢献では、1930年には世界に先駆けて超耐磁気時計を生産したり、世界で初めて1971年に透明のプラスチック時計を作ったりしました。1984年には名誉あるオリンピック・オフィシャル・ウォッチになるなど、精度・品質の信頼を勝ち得ていました。当初より、リーズナブルな価格にするために、エボーシュメーカーから各種部品を調達して、自社工場で組み立てるというシステムを導入していました(全く無駄を廃した合理的なアメリカ・スタイルの経営手法かと思います)。

クォーツが登場した1970年代、スイス高級時計メーカーが苦戦して廃業に追いやられたり、業務を縮小したりした時でも、いち早くクォーツ化に道を開き、現在でも逞しく生き延びてきました。メカ式時計が脚光をあびている現在でもクォーツ式がメインで、面白くて楽しい時計作りに邁進しております(内蔵する機械は殆どETA社製です)。画期的なクォーツ式ナビゲーター(48000円)や、PRS200クロノダイバー(53000円・クォーツ式)、トノー型のレプリカ1925(手巻き98000円)等を今、発売しております。

過去に於いてチソットのセールスマンから面白い話を聞きました。イタリア人はファッションセンスで時計を選び、スカンジナビア人(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)は価格で購入時計を決定し、フランス人は品質で選び、日本人はブランドで選ぶと・・・そうスイス時計業界人は思っていると(フランスでティソは非常に人気がありました。おそらく手前味噌なのかもしれませんが)。30年前でも日本人はブランド志向であることを当時のスイス人は言い得ていました。