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2007年01月22日

●第294話(ア・シールド社Cal.1977)

大阪府O市T様から修理依頼を受けた、RADO婦人用手巻き腕時計は、Cal.AS(ア・シールド)1977 21石のムーブメントが入っていました。オシドリ、カンヌキ、日の裏機構が錆びていましたので修理完了するまでには大変な目に会いましたが幸いにも再び動くようになってくれて一安心しました。

この機械は、35年ほど前後に総計で3000万個も生産された、有名なキャリバーでスイスの多くの有名時計メーカーが採用していた優秀な手巻き婦人用ムーブメントです。機械、落径13.00×15.15mm 厚さ3.60mmの薄型小型ムーブメントの為に、おしゃれな女性用ドレスウォッチのムーブメントととして採用されました。

この機械が開発される事によりいろんなデザインが可能になったのです。ア・シールド社は、当時スイス最大のエボーシュ会社であったので、多種多様なムーブメントを生産し、有名時計メーカーに納品していました。多くのスイス時計メーカーがア・シールド社の恩恵を受けていたと思われます。(現在のETA社に匹敵するような規模の会社であったと思います。)

1977が生産される以前には、婦人用手巻きムーブメントとして、Cal.1012  5振動、Cal.1677  6振動が存在しました。1977は、19800振動で、テンプの直径が6.70mmという、超小型にも関わらず、ある程度の精度を出す事に成功していた機械です。1977を改良して、Cal.1977-2が、世に出ましたが、特に改良された点は、持続時間が、長くなった事で人気を博しました。また、テンプを大きくすることにより慣性モーメントの効果をだし、歩度の安定を図りました。

当時の国産のS社、C社にも、このCal.AS(ア・シールド)1977に非常に良く似た機械がありました。当時のご婦人の方は、こういう小型メカ式手巻きムーブメントを内蔵したおしゃれな腕時計を身につけて、颯爽とお出かけになられたに違い無いと思います。 読者の方のお母様にも、きっと一個か二個、このような小型手巻き婦人用腕時計を持っておられるのではないか?と思います。