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2013年01月14日

●続時計の小話・第104話( アンティークΩ婦人用腕時計のOH )

富山県のT市のSご夫妻が弊店にご来店下さり、奥様のお母様の愛用されておられた オメガ婦人用手巻き腕時計のオーバーホールの修理ご依頼を受けました。

この腕時計はCal.484 17石(機械落径15.520mm 機械幅12.50mm 機械厚さ3.60mm 振動数19,800)の 1964年製造された今から45年前の腕時計でした。

当時の価格はおおよそ、5万円前後で販売されていたものと思われ、 当時としては、かなりの高級腕時計であったと推測されます。 (その頃の大卒初任給は3万円前後であった時代です。)

地板等は金メッキが綺麗に施され、まさしく美的感覚に優れたムーブメントで湿気、錆等に対しても 充分に保護されている設計でした。 既に、移動ヒゲ持ち装置が装備され、ヒゲ玉を回す事無く、片振り修正が迅速に容易に出来る様に設計されていました。

調速機構においては、緩急針に2ピースタイプを採用していて、2本のヒゲ棒の間にヒゲゼンマイを通し、 極細幅の両当たり調整を見事に成し遂げていました。 その頃のインターナショナルや、オメガは、2本のヒゲ棒を持ったヒゲ受けを採用し、 ヒゲゼンマイ外端曲線を完璧な程にまで調整して、見事な極細幅の両当たりにしていました。

その事により等時性に優れた高精度が保証されていました。 現在のメカ式腕時計では、とてもかなわないヒゲ調整をしていて、45年前の時計メーカーの技術者のレベルの高さが伺い知れます。 時計技能者の技術教育を徹底的にしていた賜物ではないかと思われます。

オメガ婦人用手巻きCal.484は、 1955年に最初にCal.480が開発・発売され、その当時はテンプはチラネジ方式を採用していました。 1957年に改良発売されたCal.482から、テンプは丸テンプ方式に変わり、 1969年発売されたCal.485まで改良発展し、その後クォーツの出現になり、消え去る運命を辿りました。

今後メカ式婦人用手巻き腕時計がどのメーカーから製作・発表されても、オメガCal.484に優るムーブメントは 出現しないのではないか、と断言しても差し支えない、と思います。 それ程までに小さいながらも頂上を極めたムーブメントでした。 その他にオメガ社には婦人用メカ式にCal.620 Cal.690 Cal.640 Cal.730の非常に優れたムーブメントが 過去に存在して光芒を放っていました。