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2007年01月22日

●続時計の小話・第21話(リコー・ダイナミックワイド腕時計)

現在、国産の機械式腕時計を発売しているのは、セイコーとオリエントの2社のみですが、過去に於いてはシチズン、リコーもメカ式の腕時計を製造・発売していました。

40年前のリコー時計は進取の精神に富んでいてハミルトンと提携してハミルトンリコー電子腕時計も発売していて知名度は現在と比較に出来ないほど有名な時計メーカーでした。

今から40年ほど前、リコー時計が末和海先生を中心として全力を挙げて開発した紳士用自動巻デイデイト腕時計に、『リコー・ダイナミックワイド』、『リコー・ワイドデラックス』(当時の価格で12,000円前後、大卒初任給が30,000円位の時代です)が、ありました。

現行のグランドセイコーメカ式腕時計を先日オーバーホールして、GSの輪列配列の対極をなす腕時計が、『リコー・ワイドデラックス』の時計ではないか?と記憶を遡っています。

リコー・ワイドデラックスは地板外径が29mmありましたが、イプシロン方式(テンプ、アンクル、ガンギ車、4番車、3番車、2番車、角穴車、丸穴車がE字の形で配列しています)の輪列車・配列構造をしている為に、地板直径29mmを有効に、目一杯使っていました。その為にテンプの外径が10mm弱という、大きなテンプを採用する事が出来、18000振動のロー・ビートながら、高精度が出た機械でした。

当時のオリエント高級腕時計のように自動巻ボールベアリングにルビー石を採用していてローターがスムーズな回転運動が出来るように設計されていました。(カレンダー機構が少し複雑で部品数が多くて組み立て調整に難儀された職人もいたものと思われます。)
特にアンクルが特殊な形状をしておりアンクル竿に穴を開け、ドテピン一本をその中に入れていました。

普通、ドテピンは2本あるのですがリコー・ワイドデラックスは、ドテピン1本でアンクルが安定した作動をしていました。オメガ、セイコー等の小型婦人用にもこの形状をしたアンクルが採用されていました。

リコー時計は、現在クォーツ腕時計のみを製造・販売しており、どちらかというと量販店・スーパ等に向けに安価なクォーツのみを販売しておりますが、昔は柱時計や、腕時計に自社開発した良い時計を作り続けていました。

機械式腕時計を復活させるのは、並大抵の企業努力では叶わない事なのですが、オリエント時計がメカ式を見事に復活させた様に、歴史のあるリコー時計もメカ式腕時計を復活させて欲しい、と願っています。秀でた機械式腕時計を世の中に送り出せない時計メーカーは今後存続していくのは大変であろうと推察しています。

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